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中小企業診断士 科目別試験対策 一次試験 〜経営情報システム〜

今回は科目別の試験対策についてお伝え致します。
『経営情報システム』科目の中身について触れているので専門用語も一部出てきますが、初学者の方でもわかりやすいように記載しておりますので、学習の指針にしていただければと思います。

一次試験『経営情報システム』試験概要

試験時間:60分

ほとんどの問題が用語の知識を問われる問題となっており、問題文もそれほど長くなく考えて解ける問題はほとんどないため、60分の試験時間で十分に対応できる科目といえます。解答間違いがないか、見直しにまで時間を使えるようにしましょう。

配点・形式:4点×25問

令和2年度まではほとんどの設問の解答が4択でしたが、令和3年度ではすべての設問の解答が5択となっていました。令和4年度以降はどうなるかは分かりませんが、より正確な知識が必要となる可能性があります。

科目合格率推移

  • 2021年度:9.3%
  • 2020年度:28.1%
  • 2019年度:26.6%
  • 2018年度:22.9%
  • 2017年度:26.6%

※一次試験合格者は科目合格者としてカウントされていないため、実際に当科目で60点以上取られた方の割合は上記よりも高くなります。
科目合格率としては他科目と比べて高い科目です。
しかし、年度によって難易度の波が大きく、科目合格率が一桁になる年度もあります。
平易な年度には得点源とできるよう、難解な年度には足切りにならないように学習を進めておきましょう。

経営情報システム科目の全体像と学習の取り組み方

経営情報システムは、情報技術に関する知識からの出題を中心とした科目です。
その内容詳細は下記に記しますが、コンピュータを構成する物理的な装置に関する知識から、プログラミングに関する知識、I Tシステム導入プロジェクト管理など多岐に渡ります。
一つ一つの用語の意味やつながりを理解しながら覚えていく必要がありますが、同時に情報技術そのものの構造や概念を理解することも重要です。
IT業界から遠い業界の方はとっつきづらい内容も多々あるとは思いますが、一通り学び終えた後には普段の業務の見え方を大きく変えてくれる科目の一つです。
ぜひ日常的に使用している情報技術(スマホやそのアプリ等)とのつながりをイメージしながら勉強を進めていきましょう。

出題される領域は、大きく4つに分けることができ、以下に概略とその攻略法を示します。

  • 情報技術に関する基礎的知識
    ハードウェアやソフトウェア、ネットワークに関する知識やデータベースの構築方法やSQ言語などの周辺知識までを扱う。
  • システム・ソフトウェア開発
    システムの構造、能力、セキュリティ等の基礎知識とその開発方法に関する理論を学ぶ。ITシステム企業がどのように仕事を進めているか、自社のシステム部の考え方などを理解するのに非常に役に立つ分野です。
  • 経営情報管理
    システムを実際に使用する運用面に関する知識が中心の内容です。ガバナンスや自社の外にあるI Tリソースの知識、活用方法を学びます。
  • 統計解析
    近年、重要視されているデータ利活用の基礎知識を問う分野です。

一番のメインとなるのは「情報技術に関する基礎的知識」の分野になり、試験の約5~6割がこの分野から出題されます。
かつ、この分野の問題は比較的点数が取りやすいものが多いため、学習もこの分野をメインとするのがよいでしょう。
「システム・ソフトウェア開発」「経営情報管理」の分野からは、約3~4割が出題されますが、比較的難易度の高い問題が出題されやすくなっています。
「統計解析」の分野は、毎年2問出題されますがその内容はテキストに載っていない難問が出題されることがほとんどです。

試験合格を目指すにあたっては、「情報技術に関する基礎的知識」分野に注力し、8割程度の得点を目指す。
「システム・ソフトウェア開発」「経営情報管理」分野では基本問題を落とさないよう知識をつけ、6割程度の得点を目指す。
「統計解析」分野は学習に時間を使わずに、偶然2問中1問取れればOKというスタンスで臨む。

といった取り組み方が効率的です。

学習の進め方

①過去問を確認する

この科目もまずは本試験の問題に目を通して、どのレベルの問題が、どういった形式で出題されるかを確認していきます。そうすることで今後の勉強でどの程度まで暗記、理解しておけばよいのか、到達するべきゴールの目安を立てることができます。

経営情報システム科目では前述のとおり知識を問う問題が多いのですが、下記のように様々な形式で出題されます。

  • 「空欄穴埋め式になっている問題」
  • 「問題文で用語の説明が記載されており、その説明に合致した用語を答える問題」、
  • 「問題文である用語が示され、その用語の意味が記述された選択肢から正しいものを選ぶ問題」


いずれの出題形式においても重要なのは用語の意味を正確に理解しておくことですが、問われ方をイメージしながら学習を進めていくことでより効率的な学習ができます。

②テキストと基本問題集を進める


この科目はIT関連の知識がない方にとっては取り掛かりにくい部分もありますが、安心してください。
得点するために最も重要なのは、情報技術の仕組みを理解することではなく、用語の意味を正確に暗記することです。
テキストを読み進めている際に理解が追い付かないこともあると思いますが、そのまま読み進めて問題ありません。
1セクション読み終えたタイミングで基本問題集に取組み、用語の意味が暗記できているかを確認します。

テキストでのインプット
→問題集でのアウトプットによる確認
→できなかった問題をテキストで再度インプット

このサイクルを繰り返してインプットの質を高めていきます。
また、その際に問題集で出題された用語だけでなく、その関連用語の意味まで押さえることを意識しておきましょう。

③過去問演習を進める

ある程度テキストでの知識補充が進んだ方は、続いて過去問に取組んでいきましょう。
テキスト外の範囲からの出題のため解けなかった問題が多いと思います。
情報システム全般ですので、当然に学習内容が広く、テキストに載っていない論点が出題されることが多い科目です。
テキスト外の問題は一定程度割り切る必要があります。
一方、テキストに載っているのに解答出来なかった論点に関しては、テキストを再度振り返り、周辺の知識も合わせて補填していきましょう。
テキスト外の範囲が出題されやすい科目だからこそ、基本問題は絶対に落とさないようにすることが重要です。

学習の留意点

用語の暗記はアウトプットの繰り返しで質を高める

当科目では、アルファベット3文字、4文字で表現された記憶に残りづらい専門用語が多く出てきます。
そのためいざ問題を解こうとすると用語やその内容が思い浮かばないといったことがよく起こります。
記憶を定着させるためにはアウトプットの回数を増やすことが効果的です。
基本問題集を繰り返すことや、単語の暗記帳のようなものを活用し、すでに定着している知識に結びつけるようにするとよいでしょう。
用語の意味を押さえておくだけで解答できる問題を落とさないためにも、繰り返しのアウトプットで、知識の定着を高めていきましょう。

統計解析分野には時間をかけない

ほぼ毎年、統計解析の分野から2問出題(最後の2問であることが多い)されますが、非常に難易度の高い問題が出題されることが多く、正答率も低い問題となります。
テキストに記載されている知識を押さえるだけでは到底正答が導けるものではなく、毎年満点を狙うのであれば、専門書を1冊身に付けるような知識が必要となります。
非常に学習の時間効率の悪い分野であるという認識をもって臨み、テキストに記載されている基礎用語の意味を把握(それだけでも理解が難しいため、理解できる部分だけでも良い)するだけで学習は済ませ、本試験では2問のうち1問でも偶然取れれば十分という気持ちでいきましょう。

ITトレンドにアンテナを張っておく

経営情報システムの科目では、情報技術の進展に伴い、最近主流になっている情報技術について出題されることが少なくありません
例として、数年前のテキストでは名前も載っていなかったPython(機械学習などに使われるプログラミング言語)に関する出題や、DX推進ガイドラインに関する出題、テレワークの浸透に関する出題、などが挙げられます。
こういった問題では、「テキストに載っていないので、全くわからない」と感じる人と、
「普段の業務で扱っている知識だから簡単だ」と感じる人に分かれます。
自社の情報システム部の方から普段の業務の話を聞く、IT関連のコラムやニュースには目を通す、など日常生活でそういった情報に触れておくことが試験対策に繋がります。
自身の学習の負担にならない程度で構わないので、IT関連の情報にはアンテナを張っておきましょう。
また多年度受験をされている方も含めて、当科目のテキストは必ず最新年度のものを準備しましょう
情報の入れ替わりが激しく、テキストにも毎年新しい情報が追加されます。
一方、実施に使用されなくなった技術などは淘汰され試験範囲から外れていくからです。

試験対策として割り切って学習を進める(理解に時間を使い過ぎない)

学習する範囲が広いため、システムエンジニアなどで活躍されている方を除くと、しっかりと内容を理解するまでに多大な労力がかかる分野も多くあります。
重ねてではありますが、当科目の本試験を突破する上で重要となるのは、用語を正確に暗記できていることになります。
上述の通り、普段の業務と結び付けることで暗記の助けになり、理解も深めることは間違いありませんが、全てを理解するまで時間を使う必要はありません。
最も重要なのは本試験で合格点をとることですので、試験対策と割り切って用語を暗記する時間を確保しましょう(もちろんこの用語の暗記が進むことが、情報技術の理解に助けになります)。

ITパスポート資格の学習を活用する(参考)

IT系国家資格の基礎的なものとしてITパスポートという資格があります。
現在、IT系資格の取得を推進し、当資格の受験費補助や資格取得一時金の支給を行う企業が増えています。
当資格の中身はストラテジ系、マネジメント系、テクノロジ系に大別されるのですが、そのうちのマネジメント系とテクノロジ系は経営情報システム科目と試験内容が類似しており、学習をそのまま活かすことができます(ストラテジ系は企業経営理論の学習に繋がる)。
もし勤め先の企業が当資格取得を推進している、時間に余裕があるという方はこちらの資格にも合わせて取り組むのもよいかもしれません。

コラム 〜中小企業診断士が経営情報システムを学ぶ理由〜


試験対策とは少し離れますが、診断士と経営情報システムとのつながりについて考えてみます。
まず、企業内診断士が情報システムを学ぶことのメリットは非常に大きなものがあります
企業を経営する上で全ての業務に関わるシステムの構造や考え方を理解することで、業務の効率や企画提案など実際の業務が大きく改善されるでしょう。
同時に、中小企業の経営支援をする独立系の中小企業診断士にとっても非常に重要な分野です。
業務の改善や効率化と聞くと、システムの導入が真っ先に思い浮かぶと思いますが、中小企業のソフトウェアへの投資はずっと横ばいで、大企業との差は広がってきています。
そんな中小企業の中にはエクセル管理もままならず、フリーソフトを導入するだけで大幅な業務改善になるような企業も多々あります。
業務自体の改善と、運用するシステム面での改善を中小企業診断士が同時に提案できることは非常に意味があり、実際に独立されている診断士は情報系の他資格を保有するダブルライセンスの方が数多くいます
受験生の皆様にとって、資格取得後のビジョンの想像に少しでも役立てば幸いです。

論点別学習ポイント

ここからは論点別の学習ポイントと過去問での出題例を紹介します。

情報技術に関する基礎的知識

情報技術に関する基礎的知識とは、

  • ハードウェア
  • ソフトウェア
  • データベース
  • ネットワーク
  • インターネット
  • セキュリティ対策
  • システム構成技術
  • プログラム言語
  • その他

に大別することができ、情報技術全般を構成している様々な要素について学ぶ分野となっています。
テキストの7割弱を占めており、暗記しなければならない用語も非常に多いですが、基本的な問題が出題されることが多く、得点源にしなければいけない分野となります。
この分野の対策として必要なのは、徹底的な用語の暗記ですので前述のとおり問題演習を通して知識を定着させましょう。


また、用語の意味を問われる問題では、以下の過去問で出題されているようにテキストに載っていなく、似たような複数の用語を組み合わせて出題されることがよくあります。
このような問題を正答するためにはテキストに載っている用語をきちんと理解、暗記し、その知識を糸口として問題に取り組むということです。


例えば以下に掲載している問題であれば、基本用語である「データウェアハウス」と「データマート」の用語の意味を正確に押さえていれば正答を導くことが可能です。
(以下過去問の正答は (ア)ですが、上記の二つの知識から選択肢を絞ることができ、正答を導ける可能性が高くなります)


もちろん、時間に余裕があれば基本用語以外の用語も押さえておくに越したことはありませんが、合格点を取るために優先的に取り組むこととしては、やはりテキスト内の基本用語の意味を正確に暗記することになります。

※令和3年度 経営情報システム1次試験問題より抜粋

システム・ソフトウェア開発

システム・ソフトウェア開発は

  • 開発方法論
  • 開発に関するガイドライン
  • パッケージソフトウェア

に大別されます。分野ごとの本試験での出題実績は以下の通りです。
開発方法論:2~3題
開発に関するガイドライン:1~2題
パッケージソフトウェア:ほとんど出題なし

開発方法論

この論点では、システムやソフトウェアの開発手順である
分析→設計→プログラミング→テスト
の各工程の手法等について学びます。
単純な暗記ももちろん重要ですが、この論点では構造的に知識をつかむために図を基にしたイメージでの記憶をすることが重要です。
過去問では以下のように出題されています。


※令和3年度 経営情報システム1次試験問題より抜粋

開発に関するガイドライン

この論点では、システムやソフトウェアの開発を進めるための雛形となる開発フレームワークや手法について学びます。
出題範囲が広く、難問が出題されやすい分野となります
そのため、あまり深入りしないことをお勧めします。
システム開発全般のフレームワークであるPMBOK、システム開発見積もりのCoBRA法、プロジェクト進捗管理のガントチャート、など代表的なものの概要を押さえる程度の学習に留めておき、基本問題であれば解答できるレベルを目指して学習を進めましょう。
過去問では以下のように出題されています。


※平成30年度 経営情報システム1次試験問題より抜粋

経営情報管理

経営情報管理とは、経営戦略を実現するための情報システムのあり方、IT資産管理を行うための代表的な手法、ITトレンドに関すること、などを学ぶ分野になります。
この分野の学習あまり深入りしないことをお勧めします
その理由として、
頻出であるガイドラインに関する出題に関しては、テキストに載っていないような深い論点を問う出題が多いことと、
常識的な感覚で選ぶ選択肢が正答に繋がることが多いためです。
また、ITトレンドに関する出題に関しては、こちらもテキストに載っていない内容が出ることが多いためです。
そのため、この分野の対応策としては、上述したようなITトレンドにアンテナを張る事や、自社の情報システム部の業務を把握することなどが役立ちます。
過去問では以下のように出題されています。


※令和3年度 経営情報システム1次試験問題より抜粋

統計解析

統計解析とは大量のデータを分析し、そのデータの傾向を明らかにすることですが、当科目ではそのうち、「検定」と「多変量解析」に関する内容が問われることが多くなっています。
上述していますが、この分野は特に学習に時間を費やす必要はありません
本試験問題は「t検定」や「F検定」という用語の意味をテキストに書いてある通りに暗記していても解答出来ません。
具体的には
「t検定とは、帰無仮説が正しいと仮定した場合に、統計量がt分析に従うことを利用する統計学的検定法の総称である。」を丸暗記しても、以下過去問を解ききれないことがわかりますね。
各検定がどういった意味をもち、どのような場面で活用できるのかといった理解が必要になります。
専門分野でない方は最小限の学習にとどめておきましょう。


※令和3年度 経営情報システム1次試験問題より抜粋

まとめ

経営情報システム科目は、暗記に重点が置かれている科目ですので、比較的後半に勉強される方が多いと思います。
用語の暗記に関しては短期記憶として対応することで問題ありませんが、日常生活から情報技術に触れることや、ITトレンドにアンテナを張ることなどは、早くから意識している方がよりたくさんの情報を吸収できるかと思います。
特にITに関することに苦手意識を持っている方は、早めにテキストを1周読み概要を理解した上で、上記内容を意識しながら日常生活を送ることは大きな試験対策に繋がるかと思います。
ITに精通していることは資格取得後にも大いに役立ちますので、苦手意識を持たずに学習を進めていきましょう。