「中小企業診断士の年収の現実は?」「中小企業診断士って儲からないの?」このような悩みはお持ちではないでしょうか?
中小企業診断士は、経営コンサルティングにおける唯一の国家資格であると同時に難関資格でもあります。
学習のモチベーションを上げるためにも、中小企業診断士の年収の現実は気になる方も多いですよね。
この記事では中小企業診断士の年収の現実について、実際のデータを基に詳しく解説します。
「会社で働く場合」「独立する場合」それぞれのケース別の年収についても解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
中小企業診断士の年収の現実
中小企業診断士全体の平均年収は約740万円と言われています。
令和3年に国税庁が発表した「令和2年分民間給与実態統計調査結果について」によると、給与取得者全体の平均年収は433万円となっているため、平均より高い年収といえるでしょう。
このように平均より年収が高い中小企業診断士ですが、資格取得が直接年収アップにつながるわけではないのが現実です。
中小企業診断士は国家資格ではありますが、税理士や公認会計士のように「独占業務」といわれる業務がないためです。
また、「独立」して働いているのか「企業内診断士」として働いているのかによっても年収はかわります。
全体としては独立した方が年収が高い傾向にあり、年収1000万以上の方も珍しくありません。
しかし独立にはリスクもあるため、とにかく独立した方がよいという訳でもなく、自身の状況にあわせて選択する必要があります。
[出典:https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2020/pdf/001.pdf]
中小企業診断士は、生涯年収で考えると良い?
上記のように、資格取得が直接年収アップにはつながりにくい中小企業診断士ですが、生涯年収をあげるには非常によい資格といえます。
中小企業診断士はお互いのつながりが強く、雑誌やWebサイトの記事執筆や補助金の申請など仕事を多くもらうことができます。
そのため、副業として行っても年間数十万円稼ぐことは難しくありません。
また、中小企業診断士には定年がなく、長期間働くことができます。資格が無くてもシルバー人材センターなどで働くことができますが、中小企業診断士の資格を活かせば、より高い収入を得ることもできます。
そのため、企業内診断士をしながら副業で収入を増やし、定年後にそれまでの経験を活かし独立をするといったリスクを抑えた働き方も可能です。
そのため、長期的に安定して稼ぐことができるため、生涯年収で考えれば中小企業診断士はとてもよい資格といえるでしょう。
【補足】節税で所得を低くするため、実態が捉えづらい
合法的に所得を圧縮できる節税の方法はたくさんあり、中小企業診断士として働くことで、実践的な節税の知識が身につきます。
中小企業診断士の方の中には、仕事で身につけた節税の知識を自身に活用する方も多いです。
そのため、実態が捉えにくい部分もあります。
現実としては、公表されている額面以上に使えるお金は多いかもしれません。
中小企業診断士が会社員として勤務する場合
中小企業診断士が会社で働く場合の年収は、地域や企業規模にもよりますが、500~600万円といわれております。
平均年収である約740万円と大きな開きがありますが、平均年収には独立した中小企業診断士も含んだ数字であるためです。
また、中小企業診断士が会社員として働く場合、独立して働くのにくらべて全体的な年収は低くなる傾向にあるため、結果として500~600万円の年収になっております。
しかし、全体平均である433万円よりは60万円以上も高いため、年収の高い資格といえるでしょう。
資格手当で年収アップ
中企業診断士を取得するだけで、一気に年収が上がるということは残念ながらありません。
しかし中小企業診断士を取得することにより、資格手当がもらえる場合があります。
もらえる金額は企業により変わりますが、1ヶ月あたり5,000~50,000円が一般的です。
また資格手当のほか、合格祝い金として数万~数十万円ほどもらえる場合もあります。
主に、以下の業種において資格手当や祝い金を支給する傾向が高いです。
- 銀行
- 経営コンサルタント会社
- IT系企業
- 商工会・商工会議所など
資格手当や祝い金のほかにも、通信講座の費用や資格の更新維持費を負担してくれる会社もあります。
現在、会社にお勤めで中小企業診断士の取得を目指している方はぜひ一度調べてみてはいかがでしょうか。
中小企業診断士は昇進・昇格に役立つのか
残念ながら、中小企業診断士を取得したからといってすぐに昇進・昇格につながるケースはほとんどありません。
しかし、すぐにつながらないだけで結果として昇進・昇格につながる可能性は大いにあります。
まず難関国家資格を取得できるほどの知識を持っていることを証明できます。
また、仕事の合間に勉強をしている意欲も評価されることでしょう。
くわえて、中小企業診断士を取得するには経営知識のほかに、論理的思考力が必要になります。
論理的思考力は、順序だてて相手にわかりやすく説明するスキルでもあります。
そのため、現実の仕事における資料作成や会議での発表などで活かすことが可能です。。
中小企業診断士の取得で身につけたスキルを活かすことにより、社内評価が高まり昇進につながる可能性は大いにあるでしょう。
中小企業診断士は転職に役立つのか
昇進・昇格と同じく、中小企業診断士の資格を持っていることで直接的に転職が決まることはほとんどありません。
しかしまったく活かせないという訳ではなく、銀行や経営コンサルタント会社、商工会議所などの企業を支援する業種の転職においては評価されるので、転職を有利に進められるでしょう。
上記以外の会社においては、残念ながらあまり評価されないケースが多いです。
また昇進・昇格と同じく、資格取得で身につけたスキルを活かした転職活動をすれば、現実的に年収アップも狙うことが可能です。
昇進・転職どちらにしろいえることですが、資格取得することが自体が重要なのではなく、取得により身につけた知識やスキルをどのように活かすのかが重要といえるでしょう。
中小企業診断士として独立する場合
中小企業診断士として独立した場合、会社員として働くより年収が高くなる傾向にあります。
令和3年度の「中小企業診断士活動状況アンケート調査」によると、独立した中小企業診断士の年間売上(または年収)は以下です。
金額 | 回答数 | 構成比(%) |
---|---|---|
300万円以内 | 83 | 14.3 |
301~400万円 | 51 | 8.8 |
401~500万円 | 58 | 10.0 |
501~800万円 | 124 | 21.4 |
801~1,000万円 | 66 | 11.4 |
1,001~1,500万円 | 89 | 15.4 |
1,501~2,000万円 | 39 | 6.7 |
2,001~2,500万円 | 25 | 4.3 |
2,501~3,000万円 | 16 | 2.8 |
3,001万円以上 | 28 | 4.8 |
会社内で中小企業診断士として働く場合、年収1,000万円以上を貰うのは現実的ではありません。
一方、独立して働いた場合は約3人に一人が1,000万円以上の高い年収を得ていることがわかります。
また、中央値で見ても501~800万円の年収が一番多いです。
給与取得者の平均年収が433万円なので、独立した多くの方が平均以上の年収を得ているといえるでしょう。
[出典:https://www.j-smeca.jp/attach/enquete/kekka_r3.pdf]
独立はうまくいけば儲かる!?
中小企業診断士は独立して仕事を軌道に乗せることができれば高年収を得ることが可能です。
しかし高年収を得ている人が多い一方、約3人に一人が500万円以下の年収であることも現実です。
独立には当然リスクもあり、準備不足であったり独立後の仕事の仕方が間違っていたりすると高い収入を得ることは難しいです。
そのため、中小企業診断士として独立する場合は、現実を把握し準備をしっかりとする必要があります。
中小企業診断士が独立して失敗するケース
では中小企業診断士が独立して失敗するケースはどのようなものがあるのでしょうか。
失敗するケースとして、現実的に一番多いのは「公的業務」の業務割合が多すぎるケースです。
現在は以前より中小企業診断士の認知度の向上しており、国からの中小企業支援策も多く打ち出されています。
そのため、独立して間もない中小企業診断士でも仕事がなくて困ることは少ないです。
しかし国からの中小企業支援業務、いわゆる「公的業務」は民間業務にくらべ報酬は低くなります。
例として、中小企業診断士の業務である「診断業務」の報酬額を比較してみましょう。
令和3年度の「中小企業診断士活動状況アンケート調査」によると以下になります。
公的業務の報酬額 | 民間業務の報酬額 | |
---|---|---|
診断業務(平均) | 37,700円/1日 | 98,300円/1日 |
上記のように、同じ業務内容でも公的業務と民間業務では約2.6倍の報酬差があり、その他の業務においてもおよそ1.5~3倍ほど民間業務の方が報酬は高くなります。
民間業務は報酬が高い分、公的業務にくらべて高いコンサルティングスキルが必要になります。
そのため、中小企業診断士として年収アップを狙うのであればコンサルティングスキルの向上は必要不可欠です。
自身のコンサルティングスキルを上げずに公的業務ばかり受けるのは、年収を上げるという意味では失敗といえるでしょう。
[出典:https://www.j-smeca.jp/attach/enquete/kekka_r3.pdf]
中小企業診断士が独立して成功するケース
逆に、中小企業診断士として成功しているのはどのようなケースでしょうか。
ここからは、中小企業診断士が独立して成功するケースの一例をステップ毎に解説します。
具体的には以下の3つです。
- 公的業務を受ける
- 民間業務を受ける
- 外注化する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ステップ①公的業務を受ける
まずは公的業務を積極的受けていきます。
独立初期は顧客や実績が少ないため、公的業務を積極的に受けてスキルアップや実績づくりをおこなうのが効果的です。
また、中小企業診断協会への入会もおすすめです。
さまざまな案件を紹介してもらえるほか、協会内で実施する研修会や研究会に参加ができます。
研修・研究会では、中小企業診断士として働く仲間と出会うこともできるため人脈づくりにも役立つでしょう。
ステップ②民間業務を受ける
中小企業診断士として年収を上げるためのポイントは「民間業務の割合をどれだけ増やせるか」です。
そのため、公的業務で実績を作ったあとは民間業務の割合を増やしていくことが必要になります。
しかし民間業務は公的業務より報酬が高い分、高いコンサルティングスキルが求められる点には注意が必要です。
全ての範囲において質の高いコンサルティングサービスの提供を、一人で行うことは現実的にはほぼ不可能です。
そのため、事業再生や事業継承といった1つの分野に特化することをおすすめします。
ステップ③外注化する
中小企業診断士としてどれだけスキルや実績を作っても、一人でできることには限界があります。
そのため、事業が拡大して対応が難しくなってきた場合は作業の外注化も視野にいれましょう。
事務的な作業や、事務所の管理など外注化できる作業は数多くあります。
また、他の中小企業診断士にも協力してもらうのも一つの方法です。
中小企業診断士の年収が平均と比べて高い4つの理由
ここからは、中小企業診断士の年収が平均より高い4つの理由について解説します。
詳しく見ていきましょう。
①年収の高い年代が多くを占める
中小企業診断協会が発表している令和3年度の「中小企業診断士活動状況アンケート調査」によると資格を取得している年代は以下のようになっております。
年代 | 回答数 | 構成比(%) |
---|---|---|
20代 | 7 | 0.4 |
30代 | 134 | 7.1 |
40代 | 423 | 22.4 |
50代 | 592 | 31.3 |
60代 | 493 | 26.1 |
70代 | 236 | 12.5 |
無回答 | 7 | 0.4 |
中小企業診断士は資格の性質上、経営に携わる立場のベテランサラリーマンが知識向上のために取得する傾向が強く、資格取得者のほとんどが40代以上です。
40代以上で経営に携わるほどの立場の場合、役職に就いている方も多く、資格の取得以前からすでに高年収である可能性が高いといえます。
その結果、中小企業診断士の平均年収が高くなっていると考えられます。
[出典:https://www.j-smeca.jp/attach/enquete/kekka_r3.pdf]
②他の資格を持っている人も多い
令和3年度の「中小企業診断士活動状況アンケート調査」によると、中小企業診断士を取得している方は他にも資格を有している場合が多く、全体の72.2%が他の資格を持っています。
中小企業診断士は資格による受験免除があるため、他の資格も取得する方が多いようです。
また中小企業診断士は、ファイナンシャルプランナーなど他の資格と組み合わせることで仕事の幅が広がる場合があります。
そのため、より専門性の高い業務をするために他の資格を取る方も多くいます。
[出典:https://www.j-smeca.jp/attach/enquete/kekka_r3.pdf]
③唯一の経営コンサルティング国家資格のため集客・成約率が高い
中小企業診断士は、経営コンサルティングに関する唯一の国家資格です。
そのため、中小企業診断士の資格を取得することにより、コンサルティング業務における顧客への説得力や信頼を大きく向上させることができるため、集客率や成約率が高くなります。
その結果が平均年収の高さとして表れているといえるでしょう。
④会社員でも重宝される
中小企業診断士の取得により、企業における経営上の課題を発見・改善するスキルを身につけることができます。
このスキルは顧客に対してのみならず、社内に対しても活用することが可能です。
より専門的な視点から経営上の課題を解決できるような人材は、会社からすればとても貴重な存在といえるでしょう。
そのため、直接的な昇格・昇給につながらないかもしれませんが、上司などからは良い評価が得ることができます。また、長期的にみれば十分に昇給・昇格を期待することもできます。
くわえて、先述した資格手当などもあるため一般的なサラリーマンよりは高い平均年収になっています。
まとめ
中小企業診断士の年収の現実について解説しました。
中小企業診断士の平均年収は約740万円と、一般のサラリーマンよりも300万円近く年収は高いです。
会社内の中小企業診断士として働く場合でも、一般平均よりは高い年収をもらうことができます。
しかし、独立した方が全体的な年収は高い傾向にあり、約3人に一人が1,000万円以上となっております。
しかし、独立にはリスクもあり失敗する可能性もあります。
そのため、リスクを抑えて会社で安定した年収を得ながら、副業で稼ぐといった現実的な方法もあります。
メリット・デメリットを十分に検討し、自身にあった方法を選びましょう。