今回は科目別の試験対策についてお伝え致します。『運営管理』科目の内容詳細について触れているので専門用語も一部出てきますが、初学者の方でもわかりやすいように記載しておりますので、是非学習の指針にしていただければと思います。
一次試験『運営管理』試験概要
試験時間:90分
毎年5~10問程度の計算問題が出題されることもあり、90分の制限時間では足りなく感じることが多い科目です。また、当科目の試験は1日目の最終科目(4科目目)であるため、脳がかなり疲弊している状態で臨むこととなります。その為、計算問題に思わぬ時間が取られることも多いに想定されます。精神的な余裕を確保するためにも、計算問題は後回しにするなど、問題の優先順位をつけて取り組むようにしましょう。
配点・形式:約45問(2点×35問、3点×10問)
毎年約45問程度の出題となります。配点が2点の問題と3点の問題がありますが、試験問題には配点は明示されていないため、3点問題を優先的に取り組むといったことはできません。「時間のかかる計算問題が必ず3点問題」といった決まりもないので、時間をかけずに正解ができそうな問題から取り組むようにしましょう。
科目合格率推移
- 2021年度:18.5%
- 2020年度:9.4%
- 2019年度:22.8%
- 2018年度:25.8%
- 2017年度:3.1%
※ 一次試験合格者は科目合格者としてカウントされていないため、実際に当科目で60点以上取られた方の割合は上記よりも高くなります。
科目合格率としては他科目と比べて中程度の科目です。年度による難易度の波はありますが、問題数が多いため、基本的な問題を確実に得点できるように学習しておけば安定して合格点を取れる科目となります。
運営管理科目の全体像
運営管理とは
運営管理は企業の経営資源の中で、商品や製品、サービスの生産方法や販売方法に着目した科目です。大きく分けると、製品の生産管理について学習する
『生産管理』
と、商品やサービスの販売方法について学習する
『店舗・販売管理』
の2つに大別することができます。テキストの前半が生産管理、後半が店舗・販売管理で構成されており、学習する分量としては概ね、生産管理:店舗・販売管理=6:4となっていますが、試験での出題比率はおおよそ半々となっています。
また、生産管理の分野は理解が難しい論点も多いですが、店舗・販売管理の分野では用語の暗記だけで対応できる問題も多くなっています。
一次試験のみの学習効率でいうと店舗・販売管理に注力した方が効率がよいといえるでしょう。
二次試験でも出題される重要科目
運営管理は二次試験の事例Ⅲでも問われる分野です。二次試験の事例Ⅲでは主に製造業が対象となり、生産管理に問題を抱えている設定となります。
その問題がどこであるのかといった現状分析を行い、その問題に対する改善提案を行うことができるかどうかが問われます。
店舗・販売管理の分野に関しては二次試験で問われることはほぼありませんが、生産管理の分野に関しては二次試験を見据えた学習を進める必要があります。
具体的には、知識を暗記するだけでなく、「その知識が現場でどのように活用されており、その知識を活用すればどのような問題が解決できるか」といったところまで理解を深めることが必要になります。
例を挙げると、
5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)という職場管理の手法があります。
この5つの言葉がそれぞれどんな意味をもつかということを押さえていれば一次試験では得点が可能です。
一方、二次試験で必要な知識レベルは
「C社は部品の管理ができておらず、熟練作業者でなければ部品を即座に探すことができない状態である。」といった内容が事例与件文に記載されていた場合、「生産性向上の改善提案のひとつとして5Sが使えそうだな」と自分の中で想起できる状態です。
5Sという言葉が記載されてなくても、自分の中でその言葉と内容が出てくる状態を求められます。
詳しくは二次試験対策の際にお伝えできればと思いますが、生産管理の重要論点に関しては上に示したレベルまでの理解を深めておくことが二次試験の合格にも繋がりますので、しっかり時間を使って学習を行っていきましょう。
学習の進め方
過去問を確認する
他科目の対策でも述べていることですが、まずは過去問の内容を確認しておきましょう。
無理して問題を解く必要はありませんので、どのような問題が出題されているのか、どのような問われ方をしているのかを知っておきましょう。当科目では専門用語が非常にたくさん出てきます。
学習の際に、これらの用語をどこまで覚えなければならないのかと不安に思うことが出てくると思いますが、過去問に目を通しておけばどの程度まで暗記、理解しておけばよいのか、到達するべきゴールの目安を立てることができるかとおもいます。
テキストに沿って科目の全体像をつかむ
テキスト全体に一周目を通して、運営管理という科目がどういった内容について触れているのか、科目の全体像をつかみましょう。
運営管理においては専門用語が多数出てくるだけでなく、樹形図式に用語を掘り下げることが多いので、用語の意味やその用語間の関連性をつかむことに苦労します。
この段階ではそれらを全て暗記しようとは思わず、それぞれの用語の意味の理解、その構造を把握することに努める程度で問題ありません。
特に生産管理の分野では在庫管理の項やIE(Industrial Engineering)等、理解が難しい論点も多いため、初学時点で躓くことがあるかもしれませんが、分からなければ飛ばして進めても問題ありません。
過去問題を解いていくうちに理解が進みますし、どのレベルまで理解しておけば本試験に対応可能であるかの判断がついてくるようになってきます。特に難しく感じたり、イメージが湧かなかったりする分野は問題演習を通して理解を深めていきましょう。
過去問を解いてみる
一通りテキストの内容に目を通すことができれば、一度過去問を90分の時間を測って通しで解いてみましょう。ここで重要なことは
Ⅰ、90分間のタイムマネジメントを体感する
Ⅱ、自身の学習進捗度をつかむ
の2点になります。
Ⅰ に関してですが、90分の試験時間の科目(企業経営理論、運営管理、中小企業経営・政策)の中で運営管理は唯一計算問題が出題される科目となります。時間が足りる、足りないに関しては個人差が大きいと思います。自分にとって90分の時間がどういったものなのかを見極め、今後の対策に活かしていきましょう。
Ⅱ に関してですが、文章を読み取る力が得意だったり、本業での知識が活かせるなどがあれば、この時点で合格点が取れてしまう方もいると思います。一方で足切り(40点以下)に近い点数となり、苦手科目だと感じた方もいるかと思います。この時点での点数で一喜一憂することなく、再現性高く合格点を確保するために過去問を解いた結果を振り返ることで今後の他科目も含めた学習計画を改めて修正していきましょう。
テキストでのインプット、過去問でのアウトプットを繰り返す
運営管理という科目は理解に合わせた応用力ももちろん重要ですが、店舗・販売管理の分野を中心に、用語の暗記だけで対応できる問題もたくさんあります。
その様な問題はテキストでのインプットと例題や過去問題集でのアウトプットのサイクルを繰り返し、基本知識を固めていくことが重要です。
応用力が必要な問題はテキストの内容を学習した後に、過去問題集を使用して対応力を強化していく必要があります。
複数の公式や基礎知識を合わせて解答までたどり着く問題も少なくありませんので、このサイクルを繰り返すことで、得点確保の再現性を上げていきましょう。
※問題集の活用に関して
問題集を活用することに関しては本記事では触れておりませんが、時間に余裕がある方は活用することをお勧めします。
問題に対して取り組むことで自身のインプットが確かなものかを判断することができ、インプットの質を高めることができるからです。
テキストを読んで理解したつもりになっていても問題として問われると解答出来ない、思い出せないということはよくあります。
そのためにも問題集を活用しつつ理解を深める方がよりインプットの質を高くすることができるといえます。
ただし問題集では基本的にテキストの内容に忠実な設問が出題されるので、本番での対応力強化のためにはやはり過去問での対策が最も有効だといえます。
学習を進める上での留意点
興味のある分野から学習を進めていきましょう
運営管理は他科目と比較して、民間企業に勤めている方にとっては内容に馴染みがある方も多い科目ではないかなと思います。
製造業の方は生産管理の分野を、小売業・卸売業・物流業の方は店舗・販売管理の分野をそれぞれ少なからず触れたことがある内容かと思います。
また、店舗・販売管理の店舗施設に関する内容などは普段買い物をしている時でも触れることができる内容ですので、ほとんどの方が興味の湧きやすい分野といえるでしょう。
一方、生産管理の分野では少し複雑な数式が出てくることもあり、製造業以外の方にとっては実際の場面がイメージできず、理解しづらい分野もあるかと思います。
それぞれの分野別の論点が相互に繋がっていることはほとんどありませんので、自身が興味をもった分野から学習を進めていくことをお勧めします。
興味がある論点では記憶も定着しやすいので、その分野を得意論点としていけば苦手意識をもつことなく、学習が進めやすいかと思います。
計算問題、図示問題はアウトプットを繰り返しておこう
計算自体は簡単な足し算、割り算程度のものですが、当試験では電卓を使用することができません。
タイムマネジメントが重要な科目でもありますので、短い時間で計算問題に対応するためにもアウトプットを繰り返して対応できるように準備を進めておきましょう。
更に、生産管理における、部品やレイアウトに関する問題においては、図を描いてみないと分かりにくい問題があります。
こういった問題は急に本番で解こうと思っても確実にミスが出ます。
学習段階において図を描きながら解く練習をしておくことで本番でも対応できるようになります。
また、試験概要で記載した通り、当科目は試験1日目の4科目目と非常に脳が疲弊した状態で受験することとなります。
これは自身が想像しているよりも非常に注意力が散漫になっており、ミスを起こしやすい状態となっています。
そのような状態で得点を重ねるためにはアウトプットを繰り返して、考える間もなく手が動くような状態まで学習を進めておくことが重要となります。
苦手分野は戦略的に捨てることも考える
当科目は問題数が多く、ほとんどの問題が2点配点で2割強ぐらいの問題が3点配点となります。そのため配点が4点×25問で固定されているサブ科目と比較して1問ごとの比重は軽くなっています。
テキストに載っていないような深い論点や、その場で計算方法を考えなければいけないような計算問題が出題されることがあります。
特定の分野を全て捨てて勉強することはお勧めできませんが、苦手な分野に関しては基本問題(正答率が60%以上のもの)だけは解答できるように学習しておき、その分野においては難しい内容が出たら捨ててしまうという判断は悪くないとおもいます。
重要論点別学習ポイント
ここからは重要論点に絞って、論点別の学習ポイントと過去問での出題例を紹介します。
生産管理の第1章として生産管理で使われる基本的な用語を扱う論点となります。
考慮すべき基本的な観点であるQCD(品質、コスト、納期)、職場管理の手法である5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)、安全衛生管理の指標である度数率(度数率 = (死傷者数÷延べ実労働時間数)×100万)などといったものが挙げられます。
これらの論点から毎年3問程度が出題されますが、そのほとんどは用語の意味を押さえておけば解答できる基本問題となります。
そのため、こちらの論点では確実に得点ができるようにインプットを繰り返しておきましょう。
過去問では以下のように出題されています。
※令和3年度 運営管理1次試験問題より抜粋
生産計画とは製品をいつどのように生産するのかを決定することです。
生産統制とは生産計画通りに生産を行うよう統制を行うことです。
生産計画と生産統制は二次試験の事例Ⅲにおける最も重要な分野となります。
二次試験での事例企業は、生産計画と生産統制に問題(急な注文によって当日の朝に生産計画を変更している、日々の作業進捗を管理する能力をもった現場責任者がおらずその場しのぎの残業で対応しているなど)を抱えており、その結果生産効率が悪くなっているという設定になっています。
こういった情報に対して、どこに問題点があるのか、問題点を改善するためにはどのような方策を提案すればよいのかを示すことが二次試験で必要な能力となります。
そのため、この分野に関しては単純な用語の理解だけでなく、二次試験での対応を想定したしっかりした理解を進めておく必要があります。
その他、この分野でよく出題される論点としてアローダイヤグラムと呼ばれるものがあります。アローダイヤグラムとはプロジェクトが最短何日で完了するのか、クリティカルパスはどこなのかを見つけるための手法で以下のように図示されるものとなります。
こういった問題に関しては必ず練習段階で図を描くようにしましょう。
図を描かないと問題を解くことができないからです。
また、練習段階で図が描けるようになっていないと本番では絶対に図が描けず解答ができないからです。
なかなか習得が難しいですが、慣れれば間違いなく得点できるので、時間を使って何度も図を描いて学習を進めていきましょう。
過去問では以下のように出題されています。
※令和3年度 運営管理1次試験問題より抜粋
IEとは生産工学の意で生産性の向上を目的とした手法になります。
IEは方法研究と作業測定に分類することができます。
方法研究は更に工程分析と動作研究に分類することができます。
その工程分析を更に分類すると●●●といった形にどんどん掘り下げて生産性向上を目指そうという考え方になります。
まずはこの構造をしっかりと暗記することが重要です。
それぞれの言葉に対して樹形図を描いて用語同士の関係性がどうなっているかをきちんと把握できるように学習を進めましょう。
その他にも工程図記号やサーブリッグ分析の18の同素記号、標準時間の算出式など覚えることがたくさんあり、かつ理解も難しい論点となります。
ですが毎年5問前後出題される重要な論点となりますので、苦手分野を作らないように時間を使って学習していきましょう。
過去問では以下のように出題されています。
※平成28年度 運営管理1次試験問題より抜粋
まちづくり三法といわれる大規模小売店舗立地法(大店立地法)、中心市街地活性化法(中活法)、都市計画法に関連する論点になります。
これら論点は毎年1問か2問必ずと言っていいほど出題されますが、正答率の低い難問が出題される割合が高くなっています。
そのため、あまり深入りせず基本的な論点だけを押さえる学習に留めておくことをお勧めします。
時間を費やした挙句、テキストにも載っていないような掘り下げた内容が出題されることも多く、学習の時間効率が悪い論点といえます。
上記3法律の概要と、よく出題される店舗面積の規制(10,000㎡超の店舗は商業地域、近隣商業地域、準工業地域においてのみ出店可能など)を押さえておけばよいでしょう。
過去問では以下のように出題されています。
※令和3年度 運営管理1次試験問題より抜粋
POSシステム(商品の販売実績を単品単位で集計するためのシステムで、レジでバーコードを読み取って管理する)や段ボールなどのパッケージに印字される集合包装用商品コードに関する論点となります。
アルファベッドが続き、暗記が難しい内容にはなりますが、毎年5問前後が出題されるため、学習効率が良い論点です。
用語の意味を押さえておけば得点可能な基本的な問題が多いため、ぜひ得点源にできるよう学習を進めておきましょう。
過去問では以下のように出題されています。
※令和3年度 運営管理1次試験問題より抜粋
まとめ
今回は重要論点に絞って学習ポイントを紹介いたしました。
運営管理の科目では、その場で計算方法を考えなければならないような難問が出題されることもありますが、基本問題が一定数出題され、また問題数も多いため大崩れすることは少ない科目となります。
用語の暗記の質を高める、基本的な計算問題への対応力を高めておくなど、学習の時間が点数に反映されやすい科目ですので、しっかり時間を使って学習を進めていきましょう。
学習時間の確保が難しい方には店舗・販売管理の分野に注力することをお勧めします。
用語の暗記で得点できる問題が多く、時間効率が良いといえます。
ただし二次試験の合格を同年度中に目指すのであれば生産管理の分野の理解は必要不可欠となります。
もし時間に余裕のある方は一度二次試験のテキストに目を通して、どの分野の知識が必要になるのかを確認してみると良いでしょう。
上述したIEに関しては二次試験では不要ですが、生産計画と生産統制は超重要論点となります。
その上で分野別の学習のウエイトをつけるとよいでしょう。