中小企業診断士の資格を取得しようかと迷っている人で、診断士の具体的な仕事内容について知りたい人も多いのではないでしょうか?
中小企業診断士になると、様々な仕事にチャレンジできます。経営に関する幅広い知識とスキルを持ち合わせた診断士は、中小企業経営者からのニーズが高いためです。
この記事では、中小企業診断士の主な5つの仕事内容について解説します。年収や、診断士になるための手順についてもお伝えするので、ぜひ最後までご覧ください。
中小企業診断士とは
中小企業診断士は経営に関する唯一の国家資格で、中小企業の経営課題に対して適切に助言したりアドバイスしたりします。
中小企業支援法では、「中小企業の経営診断に従事する者」と定義付けされています。
他の士業が「~の専門家」というスペシャリストの資格なのに対して、中小企業診断士は経営に関して幅広い知識を持つ「ゼネラリスト」の資格といえるでしょう。
中小企業診断士と他の士業との違いは、独占業務がないことです。独占業務とはその資格を持っていないとできない業務で、例えば「税務相談」「税務代理」は税理士しかできません。
そのため、中小企業診断士には専門性よりも、多岐に渡る経営課題を解決する幅広い知識とスキルが求められます。
中小企業診断士の具体的な仕事内容5つ
では、中小企業診断士の具体的な仕事内容には、どのようなものがあるのでしょうか?主な5つの仕事について見ていきましょう。
経営コンサルティング
中小企業診断士は、依頼された企業の課題解決に向けてコンサルティングします。経営コンサルティングは、中小企業診断士のメイン業務といえるでしょう。
具体的なコンサルティング内容は、以下の通りです。
- 企業の経営状況を把握するために、経営者にヒアリングする
- ヒアリングを受けて、企業の問題や課題を洗い出す
- 具体的解決策(収益改善やコスト削減、生産管理、新販路開拓など)を報告書にまとめて企業に提出する
- 提案した改善策が適切に行われ、クライアントの課題解決につながっているかを確認する
上記を遂行するには経営知識のみでなく、論理的思考力や洞察力、コミュニケーション力も必要です。
また中小企業診断士には、「企業内診断士」と「独立診断士」の2種類に分類されます。
- 企業内診断士・・・中小企業診断士の資格を持ちながら企業に勤務し、会社の業務をしながら勤務する企業の経営に関してコンサルティングする
- 独立診断士・・・独立したうえで自ら企業と契約を結びコンサルティングする
特に独立診断士は、コンサルティング業務以外にも、知識や経験を活かして様々なジャンルで活躍しています。
補助金申請のサポート
補助金申請のサポートも、中小企業診断士の仕事です。
政府が中小企業の経営基盤強化に向けて、様々な施策を打ち出しました。その中の一つが「ものづくり補助金」で、多くの中小企業が資金調達の手段として活用しています。
例えば、厚生労働省の助成金の申請代行は社会保険労務士の独占業務になりますが、補助金申請は診断士でも行えます。
補助金申請については、他の士業よりも中小企業診断士が適しているケースが見受けられます。事業計画書には経営、財務、法律などあらゆる視点での記載が求められ、それらの分野で一定以上の知識を持つ診断士が最適なためです。
補助金の申請代行では、主に以下のことをします。
- 精度の高い事業計画書の作成
- 採択のポイントを押さえながら最新の制度内容に対応する
- 面接やプレゼン審査のフォロー
- 採択後の手続きのアドバイス
公的機関での業務
公的機関での業務とは、以下に従事して経営に関する窓口相談をしたり、専門家として企業に派遣されたりすることです。
- 国や地方自治体の行政機関
- 中小企業基盤整備機構
- 都道府県等の中小企業支援センター
- 商工会議所や商工会
診断士がコンサルティングする際、依頼を受けたきっかけは「中小企業支援機関・商工団体等からの紹介」が24.8%と最も多くなります。
【出典】一般社団法人中小企業診断協会「中小企業診断士活動状況アンケート調査」
https://www.j-smeca.jp/contents/enquete/p06.html
窓口には、経営に関する以下のような相談が寄せられます。
- 集客や営業に関して
- マーケティングについて
- 資金繰りや財務面に関すること
- IT・システム活用について
- 業務オペレーション
- 人事について
このことからも、公的機関と中小企業診断士は、つながりが深い関係といえるでしょう。
経営者向けセミナーの実施
中小企業診断士は、活動の一環でセミナーや講演活動するケースがあります。
セミナー講師のみで生計を立てている診断士は少数ですが、何らかの形で講師を務める中小企業診断士は少なくありません。セミナーをやることで、以下のメリットが享受できるからです。
- 報酬相場が高い
- 自分自身の営業に活用できる
- 知名度や信頼度がUPする
中小企業診断士が講師として登壇する場合、その業界や分野について最新のトレンドを事前に学習する必要があります。つまり、セミナー講師を務めることは、自己研鑽の良い機会にもなります。
ビジネス系記事の執筆
中小企業診断士として軸になる活動ではありませんが、執筆活動も仕事の一つです。診断士の執筆活動としては、主に以下が挙げられます。
- 書籍執筆
- 雑誌向け執筆
- 企業向けコンテンツマーケティング
- オウンドメディアの運営
執筆のみで食べていける人は、診断士でも少数でしょう。しかし、副業から始める診断士の仕事としては着手しやすく、診断士としてのスキルアップにも役立ちます。
中小企業診断士の年収は?
中小企業診断士になれば、どれくらいの年収が見込めるのでしょうか。
コンサルティング業務に従事する日数が多い診断士ほど、稼げる傾向なのは間違いありません。
コンサルティング業務日数が年間で100日以上になる診断士の年収について、中小企業診断協会が調査した結果、以下のことが明らかになりました。
- 「501~800万円」「801~1,000万円」「1,001~1,500万円」と回答した人は574人で、全体の約半分(47.55%)にあたる
- 40%以上の人が年収800万円以上稼いでいる
また、「民間業務がかなり多い」診断業務の報酬は98.3万円/日で、「公的業務がかなり多い」37.7万円/日と比べて高い傾向になることがわかりました。
【出典】一般社団法人中小企業診断協会「データで見る中小企業診断士~中小企業診断士アンケート結果から」
https://www.j-smeca.jp/contents/enquete/p06.html
国税庁が令和2年に調査した、年間の平均給与が433万円であることを考慮しても、中小企業診断士の年収は総じて高いといえます。
【出典】国税庁「令和2年分民間給与実態調査」
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gajyou/2020.htm
中小企業診断士になるための手順
最後に、中小企業診断士になるための手順について見ていきます。
1次試験を受験する
まずは、中小企業診断士の1次試験を受験します。1次試験については、年齢や学歴などの受験資格はなく誰でも受験できます。
1次試験の流れは、以下の通りです。
- 5月から6月上旬にかけて、中小企業診断協会に願書を提出する
- 8月上旬の土日2日間にわたって試験が実施される
- 9月上旬に合否発表がある
1次試験は、以下の試験会場で実施されます。(2021年度)
- 札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、那覇
1次試験は、以下の7科目で考察されます。
- 経済学・経済政策
- 財務・会計
- 企業経営論
- 運営管理
- 経営法務
- 経営情報システム
- 中小企業経営・政策
各科目100点の計700点満点で、420点以上獲得すれば合格です。ただし、420点以上獲得しても、40点未満が1科目でもあれば不合格となります。
2021年の合格率は36.4%で、前年度と比較して下降しています。
2次試験を受験する
中小企業診断士の2次試験は、2段階に分けて実施されます。例年10月下旬の日曜日に実施される筆記試験と、12月下旬の日曜日に実施される口述試験です。筆記試験に合格した人のみが、口述試験を受けられます。
それぞれの試験内容は、以下の通りです。
<筆記試験>
- 中企業の診断および助言に関する実務事例4部門より出題される
- 記述式で、1問あたり40~120字程度で回答
- 各100点満点の合計400点満点で、240点以上獲得が条件。ただし、1科目でも40点未満があれば不合格
<口述試験>
- 10分程度の面接形式で実施される
- 2次試験の筆記試験の出題範囲からランダムに質問される
- 口述試験の定評が60%以上
2次試験の合格率が18.3%前後(2021年)であることを考えると、中小企業診断士は狭き門であることがわかります。
実務補修を受ける
2次試験を突破すると、実務補修を受けます。内容は以下の通りです。
- 15日間のカリキュラム
- グループで学習(1グループ6名くらいで指導員がつく)
- 実際の企業について調査と現場診断を実施する
- 実施後資料を分析して、診断報告書を作成する
- 資料をもとに報告会で発表する
実務補修は中小企業診断士同士のネットワークが形成でき、その人脈は後の仕事に役立つでしょう。
養成課程を修了する手もある
2次試験を受験しなくても中小企業診断士になる方法が、養成課程を修了することです。
中小企業基盤整備機構や、登録養成機関が実施するカリキュラムを受ければ、2次試験なしで診断士の資格が得られます。
しかし、養成機関はだれもが受講できるものではなく、以下が必要になります。
- 書面審査と面接による2段階で考査される
- 支援機関や金融機関から派遣される場合は、推薦書が必要
また、養成機関は一定期間通学が必要です。受講期間は6か月で、授業は平日、演習は9時40分から16時40分まで、実習は9時40分から17時40分までです。
養成課程を修了するためには上記の出席時間が90%以上必要なため、多くの時間を確保できる人に限られます。また費用も高額なものが少なくありません。
上記のことを総合的に考え、判断すると良いでしょう。
まとめ
以上、中小企業診断士の具体的な仕事内容について、解説しました。
経営について幅広い知識とスキルを有する診断士は、活躍するジャンルが多いことがおわかりいただけたのではないでしょうか?
経営環境が変化する中で、日本の経済を支える中小企業を支援する中小企業診断士。ぜひ、資格取得に向けてチャレンジしてみませんか?